【1位】ウォルメックス

ウォルメックス

スーパーマーケット。米国最大手のウォルマートが母体企業である。「ウォルマート・メキシコ」を略して、「ウォルメックス」(Walmex)と呼ぶようになった。

米ウォルマートが母体

米ウォルマートは1991年、メキシコの小売業「シフラ」と合弁会社を設立した。初の海外進出だった。シフラ(Cifra)は当時のメキシコ最大の小売業だった。

地元シフラと提携

会員制ディスカウントショップの「サムズ・クラブ」(Sum's Club)を設立した。1992年にシフラと提携を強め、シフラが経営するスーパーマーケットの「アウレラ」(Aurrera)、ディスカウントショップの「ボデガ・アウレラ」(Bodega Aurrera)、住宅地密着型スーパーの「スペラマ」(Superama)の経営に参加した。

1993年には、大型総合店であるウォルマート・スーパーセンター(Wal-Mart Supercenter)を開店した。

シフラ買収で小売1位に

ウォルマート社のメキシコ子会社ウォルマート・デ・メヒコ社は2000年、合弁のパートナーであったシフラ (cifra) 社の194店舗および205のレストランを買収した。

上場

メキシコの43都市に460店舗を有するメキシコ小売業界で第1位のスーパーマーケットとなった。また、買収と同時にウォルマート社はメキシコ証券市場にWalMexの名称で株式公開を行った。

ウォルマートは、この買収によりメキシコで2番目に多い従業員数を有する企業となった。

地元コメルシアルやヒガンテに勝つ

ウォルマートの台頭に伴い、地元のスーパーマーケットチェーンは苦戦を強いられた。コメルシアル・メヒカーナ(Comercial Mexicana)、ヒガンテ(Gigante)、ソリアーナの内資系大手3社だ。

コメルシアル・メヒカーナやヒガンテはウォルマートと同様、大型総合店、会員制ディスカウントショップ、ファミリーレストランなど顧客ニーズに即した多様な形態のビジネスを展開たが、ウォルマートのような成果をあげられなかった。

成功の要因

ウォルメックス(Walmex)の成功の要因としては、積極的な投資で店舗網を拡大したことが大きい。さらに、グローバル企業であるため、コカ・コーラ、ネスレなどの国際的なブランドの食品メーカーと有利な条件で価格の交渉ができた。商品調達コストを低く抑えることができるため、低価格販売が可能になった。

物流センターと物流システム

さらに、ウォルマートはメキシコ国内全店舗で販売される80%以上の商品を集約する物流センターとIT技術を駆使した新たな物流システムを確立した。物流コストの低減を可能にしたことも要因として指摘されている。

ウォルマートは他チェーンに先駆けて日常的なディスカウント体制を実現し、低価格を看板に他チェーンよりも多くの売り上げを実現した。

【2位】アメリカ・モビル

アメリカ・モビルは2000年9月にメキシコ最大の電話通信会社テルメックス(TELMEX)から分離独立して設立された携帯電話会社。メキシコではテルセル(Telcel)ブランドで携帯電話事業を展開している。

テルメックス(TELMEX)から分離

メキシコの携帯電話サービスは1989年12月に開始され、全国9地域ごとに2社の参入が認められた。そのうち1社はテルメックス(当時)に割り当てられ、携帯電話サービス開始当初から全国展開できるメリットを受けていた。このメリットにより、アメリカ・モビルは現在もメキシコの携帯電話市場で大きなシェアを占める。

5Gサービスは、ライバルのAT&Tより約3カ月遅れの2022年2月下旬から開始した。

【3位】フォメント・エコノミコ・メヒカノ

略称はFEMSA(フェムサ)。飲料とコンビニが主力事業本社はモンテレイ。。

飲料事業では、中南米で「コカ・コーラ」の商品製造・販売を行う。米コカコーラ社の飲料の瓶詰・販売の分野において独立系として世界最大手。

「オクソ(Oxxo)」ブランドでコンビニを展開。オクソは、本拠地であるメキシコのほか、コロンビア、チリ、ペルーでも店舗展開する中南米最大のコンビニチェーンである。メキシコでは国内CVS市場の73%のシェアを獲得し、なお積極的な新規出店を続けている。

小売事業には、オクソを運営する「プロキシミティ部門」のほかに、「ファルマシアス・イザ(Farmacias YZA)」など複数のブランドでドラッグストアを運営するヘルス部門がある。さらに、ガソリンスタンド「オクソ・ガス(OXXO Gas)」を運営する燃料部門がある。

2010年、ビール部門をオランダ大手ハイネケンに売却した。

【4位】ビンボ・グループ

製パンの世界最大手。

1945年、パン製造会社ビンボとして創業した。スペイン系移民を含む5人により設立された。

主食がトルティージャのメキシコに、欧米のパン製造技術を持ち込んだ。積極的な宣伝広告でパン文化の普及に努めることで、急成長したとされる。

1956年には業務拡大によりメキシコ中西部のグアダラハラ市に拠点を置くとともに、ケーキ製造に着手した。

1971年にはリコリノ(Ricolino)、クランキー(Kranky)というブランドで、チョコレートの製造に進出した。

1972年、パン製造ラインを拡張し、1977年にはスナック菓子の製造をバルセル(Barcel)のブランドで開始した。メキシコ証券取引所に1980年上場。

経営の特徴

流通網への投資に力を入れるのが、ビンボの特徴だ。パンは製造後に急速に劣化しやすいため、製造後の消費者へのリードタイムを短くする必要がある。また中南米全体の特徴として、昔ながらの雑貨・食料品店が多く、配送先が数多く分散していることにも対応しなければならない。

独自の配送網を確立

ビンボは工場を全国に分散させ、トラック輸送に多額の投資をして、独自の配送網を確立した。メキシコ国内では外資の付け入る隙を与えなかった。

中南米全域のブランド

また、トレードマークを生かした広告宣伝にも力を入れている。例えば、創業期からの主要ブランドである製パンの「ビンボ」は、白い小熊がイメージキャラクターだ。現在に至るまであらゆる広告媒体で一貫して使い続け、中南米でこのキャラクターを見れば、誰しも同社の食パンをイメージできるほどになった。

海外進出の歴史

1980年代

ビンボの海外展開は1980年代に始まる。

1984年に米国ヒューストンに初めて輸出を行った。1989年にビンボ・セントロアメリカを設立。グアテマラに国外最初の工場を設立した。

1987年、米国ロサンゼルスとヒューストンを拠点に、商品の販売を開始したのを皮切りに、積極的な海外進出に着手した。

1990年代

1990年代には、チリのアレサ、ベネズエラのトップ製パン企業オルスムを買収。

1995年にイデアル(Ideal)のブランドで、初の南米進出となったチリにおけるパンの製造・販売に乗り出した。

1998年にはペルーでパンの製造・販売を開始した。

エルサルバドル、コスタリカ、アルゼンチン、ペルーにはビンボの子会社を設立した。

コロンビアではビスケット製造で有力なノエルに出資、2001年にはブラジルのプルスビータを買収し、一気に中南米のトップ企業に登りつめた。

米国

米国では1998年、テキサス州の米国最大のパン製造会社であるミセス・ベアーズ社(Mrs. Baird's)を傘下に収めた。

ミセス・ベアーズは1904年創立の製パン老舗だ。11の工場と3,000人の従業員を新たに取り込んだ。

1999年には、米国カリフォルニア州のパン製造メーカーであるフォー・エス社(Four-S Inc.)を買収した。

2000年代

2002年にはカナダのジョージウェストンの米国法人を買収した。「オロウィート」「エンテンマンズ」「トーマス」「ボボリ」のブランドを手に入れた。

さらにチェコのパークレーンを買収し、欧州にも足掛かりを持った。

アジアでは2006年、スペインのパンリコの中国法人を買収するかたちで中国に進出。北京に2工場を展開している。

2010年代

2017年にアメリカの同業大手「イーストベルト・ベーカリーズ」を買収した。買収額は6億5000万ドルに及んだ。

イーストベルト・ベーカリーズは1955年に米国・シカゴで設立された製パン企業だ。買収当時、従業員数2,200人、11カ国21カ所に工場を保有していた。主にハンバーガーに使用されるバンズやマフィンなどを製造する。マクドナルド、ケンタッキーフライドチキン、バーガーキング、ピザハットなどが主な顧客。

【5位】セメックス

セメント世界大手。1906年に設立された。1970年代に国内セメント会社を次々と買収した。

1992年のスペイン企業買収を通じて海外での生産を開始した。それ以降、外国セメント会社の買収を積極的に進め、事業規模の拡大を図ってきた。

1976年にはメキシコ証券取引所に、1999年にはニューヨーク証券取引所に株式を上場した。

セメックスの海外買収
1992年 バレンシアーナ社 (Valenciana), サンソン社 (Sanson) (いずれもスペイン)
1994年 ベンセーモス社 (Vencemos, ベネズエラ)、セメント・バジャーノ社(Cemento Bayano, パナマ)
1995年 セメントス・ナシオナーレス社 (Cementos Nacionales, ドミニカ共和国)
1996年 セメントス・ディアマンテ・イ・サンペール社 (Cementos Diamante &Samper, コロンビア)
1997年 リーザル・セメント社 (Rizal Cement, フィリピン)
1998年 PTセメングレシック社 (PT Semen Gresik, インドネシア)
1999年 セメントス・ビオビオ社 (Cementos Bio Bio, チリ)、アシュート・セメント社 (Assiut Cement, エジプト)、セメントス・デル・パシフィコ社(Cementos del Pacifico, コスタリカ)
2000年 サウスダウン社 (Southdown, 米国)